相続ブログ

2018.09.27更新

「選択型実務修習 講義「家事事件(相続)」感想(修習生による感想文)

1 北薗先生を講師に迎えての家事事件に関する講義が司法修習の一環として行われました。遺言、遺産分割、相続放棄、相続財産管理人等にまつわる弁護士の活動が中心的な議題でした。司法修習生は、事前に出された課題を解いて、今回の講義に臨みました。

2 遺言に関しては、自筆証書遺言と公正証書遺言の違いといった基本的なところからはじまり、検認に向けた弁護士の具体的な活動内容や遺言作成時の注意点について話がされました。将来の紛争に備えて遺言の作成経緯について記録に残しておくといった実務上のポイントは、これから実務に出る修習生にとって非常に重要な内容でした。

3 相続財産管理人に関しては、その活用場面について学ぶことができました。債務超過で亡くなった被相続人名義の自宅を相続放棄した上で取得したい場合には、相続財産管理人の選任申立てをし、生命保険等(相続放棄をした場合でも、生命保険や死亡退職金は取得できる)を資金に自宅を任意売却してもらう方法があるとのことでした。

また、特別縁故者への財産分与の前提として、相続財産管理人の選任申立てがなされる場合があります。この場合、裁判所が財産分与の審判を行う関係で、その審判が行われるかについては不透明な部分があるのではないかと疑問に思いました。この点、特別縁故者と被相続人の関係によっては、高い確率で財産分与の審判がなされるとのことで、弁護士としてその見極めが重要であるとのことでした。これに関連して、特別縁故者への財産分与は相続税の対象になるのに対し、相続分の譲渡は贈与税の対象になるなど、相続においては税金の違いにも着目する必要があります。相続税と贈与税では、基礎控除の額が大きく異なり、課税額も大きく異なってくることになります。

4 遺産分割に関しては、遺産整理の方法について学ぶことができました。複数の相続人が遠方にいる場合、遺産分割協議書を相続人間で順番に郵送して署名押印してもらう方法では、時間がかかってしまいます。そのような場合には、遺産分割協議証明書を用いることが考えられます。遺産分割協議証明書は、相続人ごとに作成し、それぞれの相続人が署名押印することでよいため、上記の方法に比べて円滑に遺産分割を行うことができます。

5 上記のような講義全体を通じて、弁護士として具体的に何をすべきか(手続きの内容や提出すべき書類等)について熟知していなければ、依頼者に対して的確なアドバイスはできないということを痛感しました。昨今の依頼者は、事前にインターネット等を通じて知識を得ることができます。弁護士は、専門家として依頼者が容易には入手できない知識を提供し、既知のものでも依頼者との関係でカスタマイズした情報を提供していかなければなりません。

司法修習もいよいよ終盤に入りました。今回の講義は、自らの学習態度を見直す契機ともなりました。

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